Diary

カレーときどき村田倫子 #22 サンラサー


オフィス街にひっそり佇むビルの下に「SANRASA」の可愛らしい文字が躍る看板。あぁ、やっとこれたよ念願のサンラサー!
カレー好きの友人が口を揃えて名前を挙げ、カレー特集の雑誌を開くたびに華やかな「サンラサー」プレートの写真が目に留まる。気になって仕方なかったお店に私の連載で行けるなんて、まだ食べていないうちからもう幸せ!
 


扉の前からすでに立ち上るスパイスの良い香り。 可愛らしいヴィンテージのドアをくぐると、いらっしゃい!!と元気の良い挨拶と満面の笑みがお出迎え。
この方はサンラサーを一人で切り盛りするまりこさん。
サンラサーの名物のお母ちゃんです!!!



爽やかな水色の壁紙にヴィンテージのドア、アンティーク調のランプ。
まりこさんのキッチンを囲んでカウンター式の店内のコンパクトな間取り。




素敵なお店ですね、と伝えると「あぁ、このインテリアは不動産屋さんが、まりこさんこれ好きだと思うよって勝手に選んで買ってきたのよ〜(笑)」と天真爛漫 に話す。
いやいや、そんなお人好しな不動産あるなんて!と驚きながらも、この時点で不思議ともう心地がよい。なんだろうこの圧倒的アットホーム感は。



まりこさんはカレーをつくりはじめて10年。 以前はなんとマクドナルドのマネージャーをされていたのだとか! (それはそれで想像がつくかも) そもそものインドカレーとの出会いは、地元熊本時代に創刊から愛読し続けた雑誌dancyuの南インドの特集。
(ちなみにまりこさんのdancyu愛が強すぎて、バックナンバーで家の床が抜けたというレジェンドがあるほど!なんならそんなまりこさんがレジェンドですが!)。この特集でバナナリーフにのったカレーを見たまりこさんは、ビビッと雷に撃たれたかのような衝撃を受け、「私はこれをたべるんだ!」と心に誓ったという。



しかし当時は、ミールスを食べれる場所は都内にも少なかったそうです。
そんな時、私も以前連載で訪れた日本の南インドカレーのルーツ、「 ケララの風II」のオーナーの開くミールスを食べる会を知り参加。そこでまたカレーにどっぷり惚れ込み、「自分でつくるんだ!」と熱い思いを抱き、本を見て作って試行錯誤したり、インド料理教室に通ったりと独学をしていたそうです。



そんな折、インド哲学の女神講座があり、女神にちなんだカレーを作るようオーダーを受ける機会が。その講座にいたゴールデン街のお店のスタッフさんがまりこさんのセンスに感動し、「うちの店でカレー屋をやらないか?」とオファーがかかり、間借りでのお店がはじまります。
はじめはカレーとは決めず、“ご飯にかけて美味しい料理”を日替わりで提供するという形でスタートしたお店。
そんな中、毎週木曜のカレーの日が大盛況!!!
「なんだみんなカレーが食べたいんじゃん!」と思ったまりこさん。
常連さんからも「カレー屋にしちゃいなよ」と発破をかけられ、サンラサーとしてカレー屋が始まったそうです。



サンラサーは、インドのサンスクリット語が語源。
「サン」が「集まる」、「ラサ」は「味」を指し、「自分の身体を構成するための1番大事なところ」という意味を持つそう。
ラサーと語尾を伸ばしたのは、インドでの女性名詞の形式だから。
インド哲学の先生が考えてくれたこの素敵な名前。
インド哲学の世界では、名前がついて、形と輪郭がはっきりすると、必ずことが動き始めると言われているそうなのです。
そんなご利益のおかげか、カレー屋になったと同時に、何と憧れのdancyuに掲載されることになったり、美味しいカレーが食べれるという噂を聞き付けたお客さんが殺到してサンラサーは大繁盛!!!!!!



そろそろ間借りでやり続けるには難しかも…と思い始めたタイミングで
「だったらお店出せばいいじゃん!」と、またもや常連さん達からの力強いエールに背中を押され、この物件でまりこさんのお店としての今のスタイルに落ち着いたのです。
実力と人徳を兼ね備えたまりこさんとカレーを巡るエピソード、素敵すぎませんか?
好きなことに真っ直ぐに、ひたむきに愛し、向かい合う姿勢が生むうねりと流れ。まりこさん本人も、「あれよあれよとことが進んだり、周りが不思議と助けてくれるのよ〜びっくり!」とニコニコしながら話してくれました。
きっと、まりこさん自身の魅力が人を惹きつけているんですね。



素敵なお話に胸を熱くしていると、「そろそろお腹すいてきたでしょ?」とカウンターから素敵なプレートがひょこり。
ほら、もう見た目で美味しいやつ!
可愛らしいお皿に、彩華やかでダイナミックな2種のカレーのあいがけとみずみずしいサラダが寄り添う完成されたワンプレート(¥1200)。
この日はココナッツチキンキーマとスリランカ風ポークカレー。



ゴロッと身が転がるお肉は見た目通り、食べ応えがっつりなのに、不思議ともたれない。なのでさくさく面白いほど軽快なペースでスプーンを口に運んでしまう。



ガツン!としたパンチの効いた辛味ではなく、お肉の旨味を引き立たせた上で、後からスパイスの風味と辛さがじんわりでも優しく追いかけてくる感じ。この口の中で繰り広げられる絶妙な間合いに酔いしれそう、、、。
追加でオーダーしたゆずとなすあさりのアチャール(各¥200)を混ぜると、食感と、味わいがまた変化して面白い。ゆずの爽やかさと佃煮のように旨味がギュッと詰まったなすあさりは初体験だったので新鮮でした。



こんもり緑が盛られたサラダをお化粧するのは、イエローが眩しい甘酸っぱいマンゴーのドレッシング。眼下には差し色に赤カブの甘酢漬け。
色彩バランスのセンスにも脱帽です。
こだわりのドレッシングは野菜の甘みをより引き立てる。
「甘いドレッシングって美味しいじゃん!原価なんて気にしないわよっ」と無邪気なまりこさん。ブルーベリーや苺も日もあるのだとか。気になりますね。



お客さんを美味しい料理でおなかいっぱいしたいと愛情の伝わる一皿と、お袋のような頼もしいたたずまいに、安心してカレーを口いっぱい頬張れる。
実家に帰ったかのような幸せな時間です。



そして、美しいカレーのプレートを見て最近既視感を覚えたのは、服をコーディネートを考える時のこと。
私はその日のコーデを決める時、ベースを決めて、そこに自分らしさをプラスするためにバックなどの小物だったり、ヘアアレンジだったり、靴下での差し色をなど何かしらの自分らしいスパイス加えるのが好きなのですが、その感覚が、一皿勝負のカレーと似てる気がします。
カレーさんだって、オシャレしたり、個性を出したりしたいよね。
だからどのお店に行っても、個性が全く違うから、毎回新鮮で楽しませてもらえるんだよな。(急な考察モード入った!すまん!話を戻します)



デザートはワタラッパレ(¥400)。スリランカの黒糖とココナッツのプリンです。これはちょっと食べてもらった方が話が早い!初めてのはずなのに、ストンと腑に落ちるほっこりした甘味。すごく優しくて、うーん、優しいのです!
日本の食べ物ではたとえが見つからないのですが、どこか懐かしい感覚に陥りました。(とにかく食べて欲しい)



食後の締めに何温かい飲み物を…と思っていると「あ、コーヒーそこのポットに入ってるから勝手に飲んじゃってね!その籠にお菓子も入ってるから!」とまりこさん。
え…ここはもう、、、リアルに実家だと思ってもいいですか?
本当におもてなし精神と愛に溢れるお袋です。



カレーのメニューは週替わりで変わるそう。
こんなに美味しいとまた違うカレーも食べに来たくなっちゃいますね!
実は、そんな風に毎日のように訪れる常連さんたちの会社が近いから、というのも、ここ東新宿に店を構えた理由の一つだったそう。 某ゲーム会社に勤める常連さんの方々がお店のロゴやイラストもデザインしてくれたそうなのです。素敵!
いやぁ、仕事先の近くにこんな美味しいカレーが食べれたらそりゃ幸せだろうなあ。(この近辺の会社員みんなずるいぞ!)
ゲーム好きでも有名なまりこさん、呼び寄せるお客さんまで、好きなものが一緒なんて、本当に陽を引き寄せるお方です。



お昼休みにまりこさんの笑顔を見て、他愛もない話をして、可愛らしいボケとツッコミを受けながら美味しいカレーを頬張れたら、仕事で嫌なことがあっても、そんなのどうでもいいくらい元気になっちゃうんだろうな。
本当に太陽みたいな人。
また顔が見たい、まりこさんのつくる愛に溢れるカレーが食べたい。
お腹も心もあたたかいものでいっぱいになり、私も笑顔いっぱいで店を後にしました。
あー、もうすでに原稿書きながらまりこさんロス!!!会いたいな!
 


 


Navigator&text:Rinko Murata
Photo:Kayo Sekiguchi
Edit:Miiki Sugita/Namiko Azuma(ASOBISYSTEM)
Design:Yuko Abe(ASOBISYSTEM)

 

INFORMATION


サンラサー
住所:新宿区新宿6-27-17カノープス新宿3F
営業時間:11:00〜15:00(L.O.14:30)
定休日:土・日・月・祝日(不定休あり)